相続コラム
遺留分
遺留分
2018.08.10
自分の財産を生前に自分で処分することは自由です。
同様に、自分が死亡したときに、残される自分の財産をどのように処分するか、誰に相続させるかも基本的には自由であり、それを実現する方法が遺言です。
ただし、その制限として、兄弟姉妹を除いた相続人には、被相続人の遺言に反しても一定の割合で相続できる権利が認められています。
これを遺留分と言います。
遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者、子、孫等の直系卑属、父母・祖父母等の直系尊属だけです。
兄弟姉妹や甥姪、叔父叔母等には遺留分は認められていません。
これらの親族が遺言によって何ももらえなくなった場合は、それに従うしかありません。
遺留分の割合は、以下の通りです。
◆直系尊属(例えば両親)のみが相続人の場合は、相続財産の3分の1
◆それ以外の場合は、相続財産の2分の1
具体的なケースは、以下の図を参考にしてください。
遺留分の算定の基礎となる財産の範囲は、相続財産に遺言者が生前に贈与した財産を加え、それから遺言者の債務を差し引いたものです。
この内、生前贈与財産については原則として、相続開始前1年間にしたものに限られます。
遺留分の権利は何もしなくても当然に有効となるものではなく、その権利を行使して初めて有効となります。
これを遺留分侵害額の請求(いりゅうぶんしんがいがくのせいきゅう)と言います。
この権利行使はいつまででも出来るわけではなく、相続の開始および遺留分の侵害された遺言または贈与がなされたことを知ったときから1年以内に行わなくてはなりません。
相続開始を知らない場合でも、相続開始から10年がたつと行使できなくなります。
まずは遺留分侵害額の請求の意思表示を内容証明郵便で通知します。
内容証明郵便による意思表示を行った後は、相手方と協議交渉することで遺留分を返してもらえる場合もありますが、そう簡単には返してもらえない場合も多くあります。
その場合は、家庭裁判所で話し合う「調停」を申し立て、調停でも話合いがまとまらなかった場合には、訴訟を提起することになります。
遺留分制度は、一般の方には馴染みが薄く、難解な制度かと思われます。
また、遺留分が問題となるケースは、遺言者の遺志と、遺言によって相続することになった人の心情、遺留分権利者の権利とが絡み合い、対立するため、非情に深刻な紛争になってしまうことが多いと言えます。
心情的な対立を激化させる前に、弁護士に相談することをお勧めします。